そこ、行ってました。

でかけた場所を淡々とメモ。

合宿6日目前編。

翌日。起きるなり飯に急ぐ。起きたのは7時20分ぐらいなのだが、これから1時間20分の間に身支度、朝飯、函館駅到着。ということを終わらせる必要がある。とりあえず素早く身支度を整える。同室で寝た先輩方とともに食堂へ。ビュッフェ形式。俺は素早く飯を食い、自室に戻って荷物を取りにいき、そのまま宿を出る。宿から昨日の道を歩き市電に乗っているととてもファーストランナーに間に合わないので宿からタクシーをおごる。タクシーの中で今日のファーストランナー、スーパー北斗3号の時刻を確認すると、重大なミスが発覚。函館の発車が8:30。
思っていたよりも10分発車時刻が早いのである。やばっ!しかし、タクシーの中では極力そのように間に合わないかもオーラは出さなかった。理由は色々とあるが、運転が荒っぽくなるのを避けたかったのである。それに運転手にばれるのが恥ずかしかったという面もある。


タクシーが函館駅に着いた。8:25。よし、何とか間にあう。速攻で駅へ。特急券は中で買うことにしようとタクシーの中ですでに決めていた。構内を駆ける。ちなみに読者の皆さんは駆け込み乗車をしないように(藁
8:27ごろ。みごと乗車。自由席のところまで歩く。スーパー北斗の下りは前2両が自由席なのだ。後ろの指定席ゾーンがほとんど一杯だったのでおそらく指定席も一杯に近いだろうなあと思いながら前へ。しかし、自由席はかなり空いていた。なぜ指定席がこれほどの混雑で(乗車率は90%ぐらいである)自由席が空いているんだろうと疑問になる。一つ考えられるのは昔、北斗の自由席は1両だった。それでいつも混んでいたらしいのだが道民の中に自由席=座れないという構図が出来ているのではないだろうか。それで、特急は指定券を用意して乗るものであるという意識が染み付いているのでは、と考えるのだが確認のしようがない。
前の方に歩いていくとさっきこの電車に乗るといって、先に出た先輩2人に遭遇。先ほどの綱渡り乗り換えのことを説明すると舌を巻いていた。スーパー北斗3号が発車。北斗の中では先輩と話をしたり寝たりして幾分穏やかな時間を過ごす。ちなみにあまり景色は見ていない。
長万部から注意しながら景色を見る。長万部の3つ先(NOT早貴・紗紀)小幌が今日のポイント駅だからである。まずは車窓からどんなところか見ておきたかったのである。急峻な地形の部分に入った。北斗が礼文華峠をトンネルで越えだしたのだ。トンネルとトンネルの間僅かな隙間に小幌駅はある。一瞬保線区らしいものが見えた。すぐさまトンネル。今のが小幌駅だったのだろうか、気のせいだったかもしれない。スーパー北斗はまた海岸線を走り出した。


スーパー北斗が洞爺駅に到着。ここで下車。今日使っている切符は函館→札幌市内(洞爺・早来・岩見沢経由)の片道きっぷなので洞爺まで一回行ってしまうと洞爺〜小幌の運賃が持ち出しになってしまうのである。それでもこのルートで行かざるを得ないのは小幌駅に止まる列車の少なさにある。下りの普通が3本、上りの普通が5本しか小幌には止まらない。そして函館から時間の無駄なくいけるルートは洞爺までスーパー北斗3号で行き、長万部行の普通に乗って小幌に降り立つ方法しかないのである。俺が今日の朝焦った訳もこれにある。これを逃すと小幌行きがダメになってしまうところであった。
話が長くなったので旅行記に戻す。洞爺では飲み物、食料などの買出しに走る。何せ小幌駅前には店があるわけがないのだから。ここで食料をカクーホせねば。飲食物を買い込んで長万部行の普通に乗り込む。きっぷの額面の運賃から俺がどこへ行くかは分かるのに洞爺駅員は何も言わなかった。


長万部行は洞爺の次、豊浦でいきなり20分ほどの停車。特急の退避と列車の切り離しが目的のよう。先ほどスーパー北斗で駆け抜けた海岸線を今度は少しだけゆっくりと越えていく。小幌のひとつ前の駅、礼文から保線の人が7人ほど乗車。おそらくこの人たちも小幌で降りるのだろう。列車(といっても単行なのだが)は甲高い警笛を鳴らして礼文華トンネルに入った。
トンネル出口付近でいよいよのアナウンス。
「間もなく、小幌です。」
案じたとおり、保線の方々が降りる。一般客として降りたのは俺一人だ。トンネルとトンネルの間に挟まれるようにして小幌駅は立っていた。ホームは鉄板でできている。乗ってきた単行ディーゼルカーがトンネルの中に消えて聞くとあたりをセミの声と360度の森が包む。


ここで、小幌駅について説明をしておきたい。一般の人にはなんで俺がここまで小幌にこだわるかが分からないであろうから。小幌駅に俺が注目したのは3ヶ月前のことであった。たまたま藤沢の図書館で見つけた鉄道関係の本に「秘境駅に行こう」という本があった。そのオープニングを飾っていたのが小幌駅だった。
「なになに、周囲に家はおろか道路もない・・・駅?」俺は気になった。
普通、駅は人が住んでいるところに出来るものである。ところが小幌はそうではない。もともと保線のために作られたのだ。車で行けばいいだろうと、誰もが思うだろう。しかし、この小幌駅はその地形があまりに急峻なところに作ってしまったために、道路が近くまでつけられないのである。このような経緯をもった駅なので当然乗降客はあまり目当てではない。実際、俺は25000分の1地形図で小幌駅について調べてみた。見事に・・・駅の周りには道がない。かろうじてけものみちが海のほうについているようだった。実は今回の小幌の目的はこの海で遊ぼうと思っていたのだ。


で、実際降りてみたのが今回の機会だった。正直、怖い。回りは一面の森。虫も結構飛んでいる。実はもう少し開けているかもしれないとも思っていたのだが、俺の見立てが甘かったということだ。とりあえず、次の列車まで5時間あるので海岸へ降りてみることにする。駅から一歩出るとそこはまさしく秘境。何が一番怖いかといわれれば北海道なのでヒグマが出る危険性があるのだ。これほど怖いことはない。そもそも、もし遭遇したら俺の命の保障はない。そして、道がこっちで合っているのかというのも不安になってきた。中学、高校とワンダーフォーゲル部として色々な山に登ってきたのだが、それらの山の方がまだちゃんとした道がついていたよなと思えるほど道が心細いのだ。草むらの中にかろうじて残っている程度なのである。下手なホラーより怖い。どうにか前に海が見えてきたとき、いきなりバカでかい看板が現れ、びっくりする。看板によるとこのあたりにはウニやアワビの密猟者が現れるようでその規制を促すものだった。
密漁=ギャング・アウトロー=怖い。さらにはもしかしたら「北の工作員」に拉致されるかもしれない・・・俺はありとあらゆる怖いものを想像した。よくよく考えてみれば、そんなに短絡的にぽんぽん出てくるとは思えないのだが、当時はものすごくテンパっていたのである。鬱蒼と茂る森の中で熊を想像してしまったのでもう堰を切ったように妄想しだした。俺は無事に帰れるんやろうか・・・また、看板を過ぎてからの道が急で怖かった。急なのだ。こけないように細心の注意を払いつつ降りていく。


ようやく海岸が見えてきた。しかし、何か音が聞こえる・・・。ラジオ?人だ、人がいる。地獄で仏とはこのことか。俺はものすごい安堵感に包まれた。坂を下りきったときその人と目が合った。今後の関係のためにも挨拶をしておく。
「こんにちは」と。
軽く昼寝をしようと思いそのおじさんと少し離れたところまで行き眠る。しかし、太陽のひざしか、何かの不安かで眠ることが出来ない。(まあ、石の海岸線だったので背中が痛かったというのもあるのだが。)
ちなみに海岸線からもこの場に進入することは出来ない。まさしく、この駅のプライベートビーチなのだ。しかし、一人だったらどうだったろうか。たぶん、不安でがたがた震えていたはずである。洞爺から持ってきたサッポロクラシックを飲み、コンビニ弁当を食べるとアルコールのおかげか幾分いい気分になってきた。のんびりしよう。時間はまだ3時間ほどある。
海で泳ぐ気はなくなったが足ぐらいつけようと思い、靴、靴下、ズボンを脱いで海のほうに向かう。冷たい。波は穏やかだが時折やや大きな波がざんぶと来る。そのときに打ち上げられる石が足に当って痛い。でも気持ちいい。
寄せては返す波。一度として同じ波が寄せることはない。そんな波の様子を見ていると時間というものの有限性と帰無性というのを思い知らされる、というのは言いすぎか。でも、飽きることはない。
いつしか時間は過ぎ、ついに次の列車が来る時間となった。軽くおじさんと話す。知らない人に
「気をつけてな」と言われると不思議といい気分になる。ありがとう。また来ますよ。もう一人は嫌だけど(爆


もう一度あの恐怖の道に挑戦。駅に戻る道は急坂だった。そりゃ来た道を戻っているのだから。でもこれを帰らなければ駅に出ることはできない。急坂で疲れたが立ち止まったらやばいような気がして、脇目も振らず突き進む。密漁の看板を過ぎて坂が平坦になった。これでもう安心。でも、ピッチを変えることなく駅までの道を行く。意外に早く駅が見えた。来た時には頼りなく見えた駅がこの上ない頼りになる存在に見えた。駅のホームに着いたとき心から安堵した。無事に帰ってきたなあ・・・と思いながら今来た道、いや森の方をぼうっと見つめた。
駅について20分ほど暇が出来た。その間通過待ちなどを体験。ヒート281(スーパー北斗)などが猛スピードで通過していく。正直、こんな小駅など見向きもしない様子である。さて乗客には俺の存在が確認できたであろうか?道と反対側のほうを見るとはるか向こうに車が走っている様子が見えた。道央自動車道かなと考える。(国道でした)貨物の通過があった後にようやく礼文華トンネルを越えてきたキハ100形のライトが見えた。来た。列車だ。乗車。離れて行く小幌駅を見ながら、何か物悲しい気分になったのは間違いない。


一駅長万部側に戻り静狩に下車する。この駅に降りた理由は特にない。ただ小幌の次だったからと言う理由しかない。俺以外に地元のおばさん三人とJR北海道の社員さんが降りた。静狩には駅舎がある。駅前にはしっかりアスファルトで出来た道がついてる。これだけのことに俺は大いなる安堵感を覚えた。さて、駅前に出てみたが特に何もなさそうなので駅舎に戻る。次の下りが12分後に来るので街を散策するわけにもいかなかった。
駅に戻ると先ほどの社員さんがいた。その方と少しトーク。俺が小幌から乗った“特異”な客だということで覚えていたらしい。聞いた話によると小幌駅にはマムシの目撃談なんかも上がっているそうで、俺はラッキーだったなと安堵することしきり。ちなみに熊は出たことがないそうだ。ダイヤグラムなどを見させてもらっているうちに下り列車が来る時間になったので2人でホームに出る。


東室蘭行でようやく旅が前に進む。ちなみに明るいうちの室蘭本線乗車は初。どこかの駅で高校生(中学生か?)が大量乗車し車内がにぎやかになる。伊達紋別を過ぎてまた車内が静かになる。伊達紋別も俺が昔書いてた小説のキャラクターが生まれた街だ。辺りを見る。有珠あたりでかの噴火した有珠山の様子でも見られないかなと思っていたのだが不意におやすみポリン。気づくと終点の東室蘭であった。慌てて下車。ここで気づいたのだがどうやら時刻表をどこかに置き忘れたらしい。旅の行程は残り僅かとはいえ、ないと心配だし、また忘れ物があると言うのはたるんでいるなと自己反省する。気をつけねば。


時間もあることので室蘭支線に乗りに行くこととする。室蘭と言えば、そう安倍なつみ。尤も、彼女の足跡をたどるには時間は短すぎる。軽く旧室蘭駅を視察しに行くこととしようと思ったのである。室蘭までは20分ほど。本当はすずらん普通列車したものに乗りたかったのだが、時間が合わなかった。仕方がない。室蘭駅で精算。東室蘭で駅から出ておらず、函館→札幌市内のきっぷの経路にも入っていないのでここで精算をする必要があった。駅から出るとタイム・リミットは1時間。久々に携帯のメールを見るとハンター君からメールが来ていたのでなっちの地元にいるよーと送り返しておく。
20分ほど歩くと旧室蘭駅が見えた。現在は観光案内所となっていた。中に入って旧室蘭駅の構内の様子などを見る。そりゃ、元鉄の街ですから。考えてみれば、釜石に引き続いてこのたび二つ目の製鉄の街である。興味深い資料などをいくつか見た後に駅へと帰る。駅に戻るともう乗るべき列車発車10分前であった。なっちの足跡を求めてという名目含めて室蘭にはもう一度来ようと思った。


先ほどの道を帰って再び東室蘭。ここからは特急に乗って時間稼ぎ。スーパー北斗17号を捕まえる。先ほどと同じように自由席に行くとまた今回も座れた。つきがいい。さっそく座る。この列車は登別も通過する速達タイプで素早く快適に苫小牧まで運ばれる。苫小牧で降りるときにまた精算。特急料金未払いだったのだ。うまく説明できて苫小牧に下車。ここで少々時間があるので、駅前のダイエーに向かう。夜飯の買出しのためである。駅の改札をでるとそこに
甲子園連覇おめでとう 駒大苫小牧高校」
駅からダイエーに向かう間に
「連覇した駒大苫小牧 ナインの顔」と称してナインの顔写真と一言が看板として上げられていた。正直、苫小牧の人々が不憫に思えた。ダイエーでかねてから探していた、リボン・ナポリン、リボン・シトロンをようやく購入。この甘い炭酸飲料がたまらない。惣菜とともに苫小牧駅に戻る。目指すは室蘭本線、最後の区間


室蘭本線のもともとの敷設理由は室蘭に夕張、万字、歌志内、赤平などの鉱山から石炭を輸送し、出来上がった製鉄を運搬することであった。そこで戸籍上室蘭本線区間はいまでも岩見沢長万部となっている。もっとも、特急列車などの優等列車はすべて苫小牧の次の沼ノ端から千歳線に入ってしまうために末端区間としての岩見沢〜沼ノ端間は地元の人と鉄道ファン以外からは見向きもされない路線となってしまっている。その末端区間に今から挑む。しかし、末端区間とはいえなかなか長い距離なのだが。岩見沢までおよそ1時間半の旅。


2両編成の列車は失礼ながら予想に反して混んでいた。もちろん立ち客が出るほどではないのだが、さらりと座席が埋まる程度には人がいた。ガラガラかなと思っていたのだが。これはこれで嬉しい。だが沼ノ端、遠浅とすぎて3つ先の駅早来で約半分の人が下車。さらに石勝線との接続駅、追分で残り半分の人が下車。ここからの客は2両で3人ぐらいとなった。栗山あたりからうとうととして不意におやすみポリン。気がつくと旧国鉄万字線の分岐駅志文を出たところであった。次が終着の岩見沢なので準備をして待つ。
岩見沢到着。実はJRでここより北にはいったことがない。というか、今回で記録を更新した。今までは函館本線の白石が最北端の駅だったのがこれで岩見沢となった。


岩見沢では20分ほどの待ち合わせ。駅前を一回りする。夜のことだったので街の規模は分からなかったが、特急も止まるのであるし、中規模以上の街であることは間違いないだろう。駅前のロータリーもそれなりに広かった。もう一度駅に戻って次の小樽行を待つ。やってきたのはロングシートの731系。この日初の電車だがロングシートでおまけにデッキなしとは北海道の電車としては恐れ入る。というか、馬鹿にしてるとしか思えん。でもまあ、これに乗るしかないので乗って先に進む。大泉洋さんの出身地江別を過ぎ、千歳線との分岐点白石に到着。ここで先に新札幌にでるか札幌に出るかと考え札幌に出ることにする。
思えばこの決断からが狂った夜の始まりだったのかもしれない・・・