そこ、行ってました。

でかけた場所を淡々とメモ。

トワイライトエクスプレスの「残念」

kyoto1172014-09-27


トワイライトエクスプレスが数々のテレビ番組や情報誌で取り上げられるようになって久しい。2015年の3月で廃止になることもあって、その人気は高まる一方で、今や乗車券を手に入れるだけでも一苦労で、幸運だと言われるようになってきている。このあたりの状況は乗車記に書いた通りで、かくいう私も1ヶ月近くあの手この手でトライした。

そんな、一般人ではなりふり構わずにトライしなければ手にすることのできない乗車券であるが、それとは対照的にトワイライトエクスプレスは本当に優雅な列車である。車輛のインテリア、エクステリア、パーサーのサービスは言うに及ばず、運行距離、時間などあらゆる要素が合いまって、日本で最も優雅な列車だと言って良いと思う。じゃあ、その旅客は?というのが今回の話題である。


具体例を幾つか上げてみよう。例えば、札幌駅への入線エピソード。桑園方から進行してくるトワイライトを収めようとホームに広がる人々。これは線路ギリギリに出ていたり、大きな三脚を立てたりしていなければ許容範囲だろう。また、到着した列車と並んでの撮影はむしろ微笑ましささえ感じる旅の一コマである。しかし、進入列車へのフラッシュ撮影やDD51に乗って(入れ替え作業で旗降るところに)撮影する旅客がいたのには閉口した。前者はうっかりフラッシュを切り忘れていたのかもしれないが、後者はうっかり乗ってしまったということはなく、明らかに乗ってor乗せて撮っている。転落や不穏挙動を考えると大変危険な行為ではないだろうか。同様の光景は洞爺駅でも見られた。
また、洞爺では北斗の退避で、敦賀では機関車の付け替えで、それぞれ10分以上停車する。ところで上りトワイライトは編成のA寝台側が先頭となるため(除:五稜郭〜青森)に機関車が付いており、機関車に最も近い客車の扉は1号車A寝台の扉となる。先ほども案じたとおりみなさん機関車を/と写真に/を撮りたいわけで、そこで起こったのは1号車扉への到着前の殺到である。1号車の旅客は最大で11人のはずだが、それ以上が集まったということは、間違いなく他の客車の旅客となる。そして殺到した旅客は扉が開くと同時に機関車へとダッシュし、発車ベルを聞いてからまた件の1号車扉へ突撃してくる。A寝台の落ち着きたるやどこへという具合である。

まだある。


食堂車でのこと。私はティータイム、ディナータイム、モーニングと3度利用して、それぞれの雰囲気を味わったが、特にディナータイムは格別だった。その料理はもちろんだったが、それとともに雰囲気が非常に洗練されていたからではないかと思っている。というのも、ディナーは\12000/人というカシオペア北斗星と比較しても高めの金額設定となっていて、これに最安のボトルワインをつけるとさらに少し値段が上がる。その金額設定のせいか、乗客の誰もが利用できるわけではなく(できれば全員がそれくらいの余裕のある方々ならと思うのだけれど)それなりの客層の中でゆったりと過ごすことができた。
というのもティータイムでは席が満席であったので、少し待っていると順番を抜かされたとか、服がTシャツに短パンだったりとか、いかにも鉄道ヲタは落ち着かずうろうろし、常連を気取る若い衆はパーサーとプライベートな話をし、会計を滞らせていた。ちなみに3度の食堂車時間ではいずれも浴衣・スリッパによる来客を断っていたが、アナウンスがあるということは過去にそういう客がいたということなのだろう。
サロンカーは2度訪れたがいずれの時間も満席で、座っている人はテコでも動かないような雰囲気で、さりとて他の旅客と語らうでも景色をぼんやり見るでもなく、特に子供らはDSに興じるのであった。(ある意味大人しかったと言えるのだけれど)さらに2度目は記念スタンプを押すべく向かったのだが、なぜか何ら関係ない旅客がスタンプの前に陣取って座り、スタンプの整理に精を出していた。整理はありがたいこととしても、わざわざ一席占領してやるほどのことだろうか?


とまあ、これら数々のことがあって私はすっかり引いてしまった。もちろん、トワイライトの設備には大変満足したし、そのサービスにも大変満足している。ところが、サービスの受け手側にそれなりの対応が求められるにもかかわらず、対応ができていない旅客が散見され、その点は大変残念に思っている。ディズニーランドではアトラクションの指示に従わなければ追い出されることもあるし、欧州のレストランではドレスコードが徹底している。それはもはや規則となっているが、もともとそれは安全なり、場の雰囲気を保つためのマナーに端を発する。そういったマナーが規則にならなければ、守ることができないのだろうか。

マナーといっても、事細かにマナー講師がしたり顔で指摘することはしなくて良い。ただ、「自分と周りが危険にならないこと、不快にならないことをしなければいい」だけのことだ。安全を脅かすような機関車への踏み入れ、雰囲気を壊すような途中駅でのダッシュ、Tシャツ短パン。考えればわかることではないか。

生き馬の目を抜くような御時世、それでは人に出し抜かれるというのは正しい。しかし、この場はあくまで豪華寝台列車なのだ。その豪華に見合う行動をどれだけ取るかで、その豪華さはさらに磨きがかかるはずなのに……現実はそれを担う権利を持った人々が投げ捨てている。これは某レストランでオーナーシェフが水を高額で出していることを客が詰っていたことに似ていて、せっかくの雰囲気、もっと言えば気品がまさにその受益者によって地に伏されるのだ。気品はそれを形作る人々によって徐々に形成されるものだが、それに対しては客も無責任ではいられないだろう。しかし繰り返しになるが、彼らはその責任を放棄し、攻撃しているのではトワイライトエクスプレスも浮かばれないだろう。


トワイライトの廃止は北陸本線第三セクター化によるものだし、直接的な影響はもちろんないが、せっかくの豪華寝台列車が醜態を晒すぐらいなら、いっそ廃止になるほうがマシだと思ったほど、非常に残念に思う一コマであった。